技術資料

面積流量計のハンチング現象 (本内容の PDF こちら

Back

 ■ハンチング現象とは
 
ガラステーパ管流量計、金属テーパ管流量計などの面積流量計に おいて
 気体計測、蒸気計測、および液体計測にてフロートが上下、左右に異常振動して
 時によってはフロートがストッパ、テーパ管に当たって衝撃音を発生することもある現象です。
 流量計測が不能となるばかりか、場合によっては内部部品摩耗、内部部品破損
 テーパ管破損、指示器破損に至り使用不可能になることがありますのでご注意ください。


 
この現象はハンチングと呼ばれています。
(チャタリングと呼ぶ場合もあるようです)

 ■ハンチング現象のメカニズム(透明テーパ管の例) 

★適正なフロート作動
図1は透明テーパ管面積流量計の原理を示しています。
質量Wのフロートの最大直径部面積S、流量Q1
のときに差圧P1−P2によってフロートは静止(浮いています)しています。
このときの流通面積はA1です。
これを式で表すと (P1−P2)=W/S になります。
図2のように流量がQ1よりQ2に増すとフロートは上昇して流通面積はA1よりA2
に増して (P1−P2)=W/S が成立する位置でフロートは静止します。
このように流量Qに見合った適正な高さ位置でフロートが静止すれば正常
な流量計測ができるのですが・・・・・・・・・・・・
★異常なフロート作動
図3は図1の状態より流量が増したときにフロートが上昇しますが、フロートは実線の位置で静止すればよいのですが破線位置に上昇し過ぎてしまい流通面積がA3と大きくなってしまいました。流通面積が大きくなった分、流量がQ3と余計に流れてしまい結果として1次圧P1が減少してしまいます。
P1が減少してしまったのでフロートは自重により下がりますが、こんどは図4の破線位置まで下がり過ぎてしまいます。
フロートが下がり過ぎてしまうと流通面積がA4と減少し過ぎてしまったので1次圧P1は上昇してフロートを上昇させ、図5のフロートが上がっていくので結果として最初の図3と同じフロート位置になります。
つまり、図3→図4→図5→図3→図4→図5・・・・・・・・・・・・・
とフロートの上下動を繰り返すことになります。

特に流量がゼロ(フロートが下がっている位置)の時点にて流量を流し始めP1が上昇するときに
フロートの上昇が過渡的になる時にこの現象が発生し易くなります。
フロートがなぜ上昇し過ぎてしまうのかというと、気体中に差圧で浮いているわけですから上昇するときのフロートには慣性力が作用して本来静止しなければならない位置を過ぎてしまうことによります。つまり、加速した車が急には止まらないようなものでしょう。

どのような条件でこのハンチングが発生しているかというと、1次圧が小さい場合です。1次圧が小さいとフロートによって絞られる2次圧はさらに小さいわけですからフロートを2次側から押さえる背圧が少なく慣性力によってフロートが上昇し過ぎる傾向が強くなると考えられています。

流量計型式、サイズ、流量レンジなどによってハンチング発生の条件は異なりますがとにかく1次圧が小さい場合に発生し易いことは明確です。
型式にもよりますが50kPa以下の仕様圧力の場合は特に考慮が必要です、また小型のパージメータ型式以外では1気圧(1atm)仕様の面積流量計は特に製作使用に問題がありますのでお薦めいたしません。

特に注意しなければいけないのは、上下、左右に振動することで流量計が破損に至ることがあることです、ガラステーパ管が割れたり、金属部分の曲がり、破損したりすることもありますので、流量計測中にハンチングが発生した場合は速やかに使用を中止してください。
面積流量計仕様書、カタログなどにて「最低使用圧力」と記載されている場合はハンチング発生を予防するために使用条件を決めているものですのでご注意ください。 1次圧が低圧力仕様の場合にはフロート直径(口径)を大きくしてP1−P2の差圧が小さくてもフロートの作動がスムーズになるよう製作いたしますので、口径選定は通常よりも大きくなります。

なお、以上の説明は正圧(大気圧以上)の場合ですが、負圧(大気圧以下)の場合はさらにハンチングの発生
が顕著に表れやすいので、負圧仕様の流量計を選定する場合は弊社営業担当にご相談ください。
 

↓透明テーパ管でのハンチングの動き↓

液体の場合にも希にこの現象が発生するときがあります。
液体中に気泡が混入していたり、気液混合の場合に同じような作動状態となり
異常振動、異常音を発生する場合があります。
気泡が混入している液体、気液混合の流体では流量計はご使用になれません。
■ハンチングの予防 (正圧の場合)
・ 1次圧力が極力大きくなる配管位置に流量計を設置(配管設計)する。
・ 流量計2次側にバルブを設置する。(負圧の場合は流量計1次側にバルブを設置する。)
  これはこのバルブで流量調整する目的ではなく、フロート2次側に背圧を加えて
  ハンチングを抑制するために設置するものです。
・ 流量調整するバルブは流量計2次側に設置する。
・ 流量計2次側の配管は極力短くする。


金属テーパ管流量計の場合のハンチング現象

★適正な作動
 下図は金属テーパ管面積流量計E−MCFの流量指示器ですが、正常な状態の場合で
 流量指示針は安定して瞬時流量を示しています。
 流量指示針の多少の振れは流量指示器内のダンパーオイル機構にて振れを小さく
 抑制することが可能です。           ダンパーオイル機構使用方法はこちら
★異常な作動
 下図の状態は流量計内部のフロートにハンチング現象が発生した時の指示器の
 状態です。下の作動図のように指示針が異常な動きとなります。
 左側の図の流量指示針が流量目盛板の下位置から上位置にかけて上下に繰り返し
 大きく振れて動きます。このときの指示器内部では「下ストッパー」、「上ストッパー」に
 流量指示針を取り付けたレバーが突きあたり衝撃をともなって繰り返し突きあたること
 になり、長い時間この状態が続いたり、短時間でも繰り返しこの状態が発生すると
 ストッパー部品(金属製)と流量指示針が衝撃によって変形したり、破損に至ることも
 あります。
 よって、流量測定中、このように
流量指示針が異常作動を起こしているのを
 発見した場合には速やかに流量計使用を中止してください。

 ハンチングによる指示針の異常な動き


このような指示レバーが激しい動きとなると指示レバーとストッパーが強くあたることで
指示レバーが曲がったり、ストッパーが破損することもあります。
指示レバーおよび指示針が曲がると流量目盛板との相互関係位置にズレが生じて
流量誤差を生じることもあります。

さらに、電気発信、積算流量にも影響し、発信値誤差、積算誤差が生じることもあります。

★蒸気でのハンチング現象
 蒸気の場合にも気体と同様にハンチング現象が発生するときがあります。
 高温、高圧では流量計が破損した場合は大変危険ですので、ハンチング現象が発生
 した場合には速やかに流量計の使用を中止してください。

★サニタリ流量計での蒸気洗浄でのハンチング現象
 サニタリ流量計で液体での洗浄(CIP洗浄)は可能ですが、蒸気での洗浄を行
 うとハンチングが発生して流量計本体内部部品破損または指示器内部部品が破損
 する場合がありますので、蒸気またはガスでの洗浄はお薦めしません。
 ハンチング現象が発生した場合には速やかに流量計の使用を中止してください。
★液体でのハンチング現象
 液体の場合にもこの現象が発生するときがあります。
 液体中に気体(気泡)が混入している場合などでは気体が通過するときにフロートが
 異常な上下作動をして流量指示針が大きく上下に振れることになります。

 往復動ポンプ、ピストンポンプなど使用すると液体の流れが脈流の状態で流れますので
 フロートの動きも脈流に同期して上下動を繰り返します。
 この状態が続くと摺動部品などの表面が摩耗して作動不良になる場合があります。
 
 ブロー水(飽和水)の場合に流量計の圧力損失によって飽和水の状態から
 圧力が下がった分、過熱状態となり蒸気になってしまいフトートが異常作動
 を起こすもので、作動状態はハンチングと同じ上下振動を伴う衝撃動となります。
 
 特に気液混合のような状態で流れる液体の場合には内部フロート部品が衝撃をともなって
 異常な動きを起こすために、流量計内部部品、流量指示器部品 などの接合部品(溶接、
 ネジ類)が衝撃によって変形、破損する場合がありますので特に注意してください。

  面積流量計の流量測定範囲(レンジ)は10〜100%ですが、0〜10%の少ない範囲では
 フロートが下ストッパより少し上に上昇しますが、測定範囲が10%に満たない場合に
 下ストッパ位置に下がってしまい、下ストッパ位置と10%付近への上昇、下降を繰り返す動き
 となりハンチング現象となります。
 流れる流量を10%以上に増せばこの現象は無くなります。

 このような流量測定では流量計が「異常な衝撃金属音がする」、「流量指示針が大きく
 振れる」のように目と耳で発見できますので、
このような状態を発見した場合は
 速やかに使用を中止してください。

 

ハンチングによる指示針の異常な動き



このような指示レバーが激しい動きとなると指示レバーとストッパーが強くあたることで
指示レバーが曲がったり、ストッパーが破損することもあります。
指示レバーおよび指示針が曲がると流量目盛板との相互関係位置にズレが生じて
流量誤差を生じることもあります。

さらに、電気発信、積算流量にも影響し、発信値誤差、積算誤差が生じることもあります。


このような流量測定では流量計が「異常な衝撃金属音がする」、「流量指示針が大きく
振れる」のように目と耳で発見できますので、
このような状態を発見した場合は速やかに
使用を中止してください。



■ハンチングの予防 (正圧の場合)
・ 1次圧力が極力大きくなる配管位置に流量計を設置(配管設計)する。
・ 流量計2次側にバルブを設置する。
  これはこのバルブで配管流量を設定する目的ではなく、バルブ調整にて背圧を加えて
  ハンチングを抑制するために設置するものです。
・ 流量調整するバルブは流量計2次側に設置する。
・ 流量計2次側の配管が極力短くなる位置に流量計を設置する。
・ 液体の場合には気体(気泡)の混入を防ぐ(脱泡器などを設置する)。
・ 気液混合の配管には流量計を設置しない。
・ 飽和水の場合には圧力損失が発生しても蒸気にならないよう飽和圧力以上の圧力を
  確保した位置に流量計を設置する。
・ 往復動ポンプ、ピストンポンプなどの脈流を伴うようなポンプ類は使用しない。
■ハンチングの予防 の為の型式選定条件(透明テーパ管タイプ)
・ 流量計と流量調整バルブのセット品を選定する。
・ 流量計とは別に流量計2次側直後配管にバルブを設置する。

■ハンチングの予防 の為の型式選定条件(金属テーパ管タイプ)
型式:E-MCF

 ガスダンパー付きモデルを選定する。(付加機構:DA)
・ 液ダンパー付きモデルを選定する。 (付加機構:DB)
・ 流量計と流量調整バルブのセット品を選定する。
・ 流量計とは別に流量計2次側直後配管にバルブを設置する。

型式:MP-MCF 、M-MCF
・ 液ダンパー付きモデルを選定する。  (付加機構:DB)
・ ガスダンパー付きモデルを選定する。「小流量タイプは非該当」 (付加機構:DA)
・ 流量計と流量調整バルブのセット品を選定する。(付加機構:N)
・ 流量計とは別に流量計2次側直後配管にバルブを設置する。

備考
液ダンパー機構は圧力5kPa(G)〜3MPa(G)の範囲に適用できますが、50kPa(G)以下
の圧力では必須となります。
金属テーパ管タイプではハンチングが発生しやすいので負圧仕様はお薦めしません。



 気体の流量計測においてテーパ管タイプの面積流量計を選定する場合は、上記の
 選定条件を考慮して 型式選定をしてください。上記の選定条件を満足しない流量計にて
 流量計測をおこない、ハンチングが発生した場合には弊社としては責任は負いかね
 ますのでご了承ください。
 


 

    流体工業株式会社        Back